第3話回顧 2
Act.2 続き
クルモンはまだ夜の街を彷徨っている。
留姫《デジモン・クイーン》を見て声を掛けてくる大学生。特徴的な髪型は、やはり覚えられ易い。デジモン・カード・バトルで優勝した小学生女子は、斯界では名が知られている。しかし何も言わず立ち去る留姫。
ちなみに、大学生の台詞で「カソード・テイマーの大会で優勝した」というものがあるが、アノード/カソード・テイマー二部作というのはカードではなく、携帯ゲーム機ワンダースワンのゲーム・タイトル(1999,2000)。その主人公が、秋山リョウだった。テイマーズでは、中盤のデジタル・ワールド編でリョウを登場させる、というのが当初からの企画にあった。私が“テイマー”という言葉をゲームに近づけて記憶していたのは、この「カソード・テイマー」の事があったからだろう。
雑踏の中で――、レナモンと二人だけのダイアローグ。シナリオから演劇的なシチュエーションになると想定していたが、映像では単に二人にスポットを当てるのではなく、虹色の抽象化された背景の中で、暗い彩色で描かれている。これはアニメならでは。
レナモンだって強くなりたいよね、と留姫はレナモンに同意を促す。勿論レナモンは強くなりたいから、強いテイマーとして留姫を選んだのだ。
だったらどうして進化しないの!? と詰問する留姫。
レナモンには答えられない。
もう随分敵をロードしてきたよね。
進化しないデジモンなんて――、と言ってレナモンに背を向ける。
今の留姫は、レナモンを進化させるという目標を達成せずには何も考えたくない。ここで思案している横顔。これはAct.3の展開を示唆している。
ここでアイキャッチ。
これよりAct.3。
恒例の登校前のカードバトルで、タカトはオプション・カードの使い方に勝負が掛かっていると悟る。しかし、そうそうすぐに会得出来るものではない。
一方、前日のゴブリモンが出現した新宿中央公園に、大掛かりな調査が入っている。
調査をしているのは、警察や消防関係ではなさそうだ。無線の音声で「インフェクト(汚染)の痕跡はみられず」と言っている。デジタル・ワールドとリアル・ワールドが干渉すると、何らかの物質的な異化があるらしい。
その中を平然と歩いている男――、ヒュプノスの山木室長。つまり、彼がこの調査現場の統率者。
地面に落ちているカード。留姫が切ったカード――。
学校では浅沼教諭がネットワーク論を講じているのだが――、チャイムが鳴ってしまう。
新任二年目程度の教師としては、時間内に話を収める事がなかなか難しいらしい。生徒の前なのにため息をついてしまう。
休み時間、ここでも《デジモン・クイーン》の話題が。
そこへ通りかかる樹莉。デジモン・カードバトルなんかには興味が無いが――、
タロットには関心があるらしい。つまり、カードには親和性がある事は示唆したのだけれど――、よもやこの後の浦沢さんのシナリオであんな事になるとは、私も想像だに……。
下校時、去って行く調査チームの車両群を見掛けるタカト。もしかしたらギルモンが奪われたのではないかと焦って走る。
ギルモン・ホームにも姿が見えなくて焦るが――、D-Arkが方向を教える。
草むらの中から顔を出すギルモン。だっておうちのなかだけじゃつまんないんだもん――という野沢さんの演技が最高。文字だけだと、何と趣きのない事か。
しかし、いつまでも人から隠し続けるのには無理があると痛烈に感じるタカト。ギルモンが人中に出てきたら――、普通――、どうなるんだろう……?
デジモンを隠し続ける事に一番苦悶していたのは、私だった。
やがては劇中世界でもデジモンが認知されていくのは間違いないが、まだ序盤の段階ではリアリティが重要だった。
試しに都庁の中庭へギルモンを連れていくタカト。
大騒ぎされる事もなく、人々は通り過ぎていく。ゆるキャラのブームが来るのは10年後。しかしこの頃に、人が入っているのだが逆間接で歩くスーツは存在していた。小中兄弟で作ったビデオでも紹介している。「DINO-PARK ジュラ紀篇/白亜紀篇」 (日本ビクター)1993 かつやま恐竜の森が出来る以前に製作したもの。 この時、紹介役の恐竜の声を担当されたのは坂本千夏さんだったという。
当然ながら、子どもなら怪獣/デジモンがそこにいたなら触ってみたい。
私が幼い頃、新宿伊勢丹の屋上で夏に円谷プロの催事があったのを覚えている。暗めの迷路があるだけで案内する人もいなかったが、そこにあったのは本物(だったと思っている)のウルトラマンで登場した怪獣の着ぐるみだった。キーラがあったのは覚えている。ラテックスの異臭の洗礼はそこで受けた。
意外と普通の人も、ギルモンの存在を不審には思わないのだと判る。――という事に劇中世界は収めてしまった。後に角銅博之さんはこの場面で衝撃を受けたと言われていた。
ストーリーはしかし、ここから一転。D-Arkが急にアラートを発すると、突如何かに気づいたギルモンが突進し始める。慌てて後を追うタカト――
ギルモンはどこかビルの地下駐車場へ走り込んでいく。
この影の描写。
当然ながら、それは留姫が仕組んだレナモンとギルモンの再戦だった。人目が少ない場所を選び、デジモンが他のデジモンの存在を察知する習性を利用したのだ。ギルモンを倒してレナモンを進化させる決意を述べる。
ギルモンを吸収(ロード)しちゃうなんて絶対に嫌だとタカトは叫ぶが――
ギルモンは既にレナモンと闘い始めてしまう。先手を撃ったのはギルモン。
無関係の車が一台ここで……。
レナモンはギルモンが連発が出来ない事を見切って、ここで跳躍、狐葉楔を放つ。
しかしここでもギルモンは怯まない。
やはり、近接格闘でしか結着はつかないのか。二者がにじり寄る。タカトは止めさせようとギルモンを呼ぶが、今のギルモンの耳には聞こえない。
その時――!
いい加減にしたらどうだ! と再びジェンリャの声が響く。
え……?
これはシナリオには書いてないです。
次回完結。