第2話回顧 1
先に謝っておかねばなるまい。第2話、テリアモンは登場するものの少しだけ。今回はタカトとギルモンの関係が形成される話だった。
君はぼくのともだち テリアモン登場!
脚本:小中千昭 演出:佐々木憲世 作画監督:八島善孝 美術:清水哲弘
アメリカの連続ドラマなら、今でも「Previously on...」という前回までのあらすじにはナレーションが入る。
テイマーズは、野沢雅子さんに生まれたてのデジモンを演じて戴く、という関プロデューサーの大胆なアイディアに、私はおののいたのだけれど、関Pは自信を持っていた。「だって野沢さんはラスカルも演じられたんだもの」
確かに……。ギルモンは徐々に成長し、究極体にまで至る。それも野沢さんだから可能となる。
更に野沢さんには、ナレーションも担当して戴く事になる。3回目以降と違ってこの2話は、やさしく童話を語りかける様なナレーションだった。
という事で前回からの続き。ギルモンが近づいて来ると、怖がるタカト。
しかしギルモンはタカトに親近感を抱いている様だ。
やっぱりぼくが考えたデジモンだ!と確信する。そして――
もう夜になってしまっている。
裏口からこっそりギルモンに段ボールを被せて、二階の自室に運ぼうとするが、当然の様に両親には勘づかれている。
こういったアニメーションが実に楽しい。
タカトの部屋で解放されたギルモン、まずはお約束の様に、机の上の物を鼻で一掃。
なんで犬とか猫ってこれやるんですかね……。
ギルモンには発語能力があると信じているタカト。ギルモンに自分の名前を教える。
ぼくはタカト。
タカト、モン?
ギルモンはタカトモンとしばしば呼ぶ様になる。
僕はデジモンじゃない。僕は――、とガサゴソ探し出して――
ゴーグルをつけて、デジモンテイマーだと宣言する。最初からつけているのではなく、自分の意思でゴーグルをつける。これで、本シリーズが“メタ・デジモンアドベンチャー”であると宣言した事になる。
ぽかーん。
私が参加した頃、このシリーズ3作目の企画タイトルは「デジモンアドベンチャーEVO」だった。私はデジモンマンガの「Vテイマー01」という用語に惹かれて、「デジモンテイマーズ」にしたいと提言した。普通、一脚本家のアイディアがこうしたメジャー作品で通るのは珍しい、と後で思った。
※長らくVテイマーがゲームだと思い込んでいたが、2018年にボルケーノ太田さんから正しく教えられた。
一方、ヒュプノスでは再びデジモンがデジタルワールドからリアライズしようとしているのを検知していた。まだクレジット上では「謎の男」の山木が、トレーサーを打てとオペレータに命じる。
この色モザイクな操作パネルがバンク・ショットとなるが、多分彼女たちがつけているゴーグル越しだと焦点が合っているのだろう。
仮想空間内のドローン、と現代なら表現出来るだろうワイルド・ワン・トレーサー。気づいたゴブリモンに破壊されてしまう。
ギルモンと一緒に眠るタカト。ゴーグルもつけたままだ。
ちょっと覗く父。やけに大きい犬だな程度に思っている。
子ども向けに書くとなっても、ライターとしての私にはある種の美学があった。なんでも台詞だけで説明してしまうと、単に場面が情報として流されてしまう。いずれ、バトルでは必殺技などを叫ぶし、現れたデジモンの名前や属性なども台詞にしなければならない。だから日常場面では、敢えて核心的な台詞を迂回する書き方をしている。
一話で居残っているタカトの教室に入ってきた樹莉が、「笛の忘れ物」と聞かれもしないのに喋ったのは、タカトが「どうしてまた教室に」的な言わずもがな台詞を言わせるよりも、タカトが訊きたがっているだろうと察した樹莉の機転を見せた方が、より印象的になるだろうという考えだった。
夫婦の部屋の会話は、父親が「タカトにペットを飼わせてもいいんじゃ」と言えば二言三言で終わる芝居だが、もじもじと言い難そうに切り出す父親に、母親が先にその案を却下する、という流れ。
回りくどいのだけれど、この両親の描写が後の展開には必要だった。
これより Act.2となる。
夜の新宿中央公園は、道路を貫く陸橋がある。しかしもう今はここでデートするアベック(死語)もいまい。いきなり光の柱が立ち、デジタル・フィールドが現れると、小学生の少女が(夜だというのに)疾走。
走りながら、デジタル・フィールドに突入時の眼球保護用サングラスをかける。
レナモンが姿を見せる。
初出のデジモンの紹介を、何かスマートに劇中で消化出来ないか、と考えたのが、ヴァーチャル・スクリーンで大きく表示させる演出だった。「serial experiments lain」で先に、NAVI(lain劇中のコンピュータ、スマホの総称)でも用いた手なのだが、これは実現していないな。扇風機状にファンを回してLEDで疑似的に実現した人を動画で見た事はある。かなりこれに近かったが、物理的に回転するファンはどうしても必要だ。
レナモンに冷徹な指示をする留姫。
2話は多くないものの、アクションのアニメーションは凄い。フィジカルなバトルでのレナモンの強さは、この後なぜ留姫がレナモンを選んだのか、充分に説得出来る描写だった
留姫が走って行った脇で抱き合っていたカップルアベック(死語)に、クルモンが興味を示している。最初は喋るぬいぐるみか何かと思っていたが――、
あからさまに、生きている、ちっちゃな、ええと……
悲鳴を上げて逃げ出すアベック(死語)。
残されたクルモン、しょんぼりすると耳が縮むらしい。と――、額の三角形が赤く光る。クルモン自身は、これが何を意味するのかまだ知らない。
バトル中のレナモン、留姫に目線をくれる。カード・スラッシュを請うている。
スラッシュ・バンク。初めて披露するのは留姫。
キャプチャでは全く伝えられないが、カードを引く前の序動など、実にリアリスティックなモーション。ただ、留姫のカード・コールは、「カード・スラッシュ!」だけは強いが、まだあまり自信ありげな感じではない。メイン3人のスラッシュ演技の進展も物語に沿っている様だ。
光のリフレクトまでもアニメーションで描き分けられる。
太田美知彦さんの「SLASH!!」がこの後のバトルいっぱいに流れる。この曲も、脳内再生頻出曲になった。
バトル中にフーガモンへ進化するゴブリモン。留姫は「有り得ない」と発言。
過去、リアル・ワールドで進化する肉体化デジモンはいなかったのだろう。そして、このゴブリモンの進化を促した要因が、すぐ近くにいたクルモンの存在だとは、まだ視聴者には判らない。
デジモンは近くに他のデジモン、それも自分より強いデジモンが現れるとその居場所を検知し、野性を剥き出しにする――というのがテイマーズに於けるデジモンの描写となる。
タカトにはなぜギルモンが威嚇的なのか理解出来ない。
パラメータでは、相手が成熟期であろうとレナモンは勝てると読んでいる留姫。
北斗の拳かドラゴンボールかというパンチの嵐でフーガモンを倒しきる。
破れたデジモンはデータとなって粒子化し、勝者のデジモンがそのデータをロードして、その能力などを継承する――という法則にしている。デジモン同士が闘う事の正当性をあれこれと思案して辿り着いた。
敗者デジモンのデータをロードするレナモン。少しフレーメン反応を起こしているのかもしれない。
強くなるのよ、レナモン――
と硬い顔のまま告げる留姫、なのだが、アイキャッチに入るほんの数フレーム前で僅かに微笑むという、見事な編集。